SSリハビリには嘘予告とかいいと思うの

「士郎、仕事よ」
 その日、時計塔から帰ってきた遠坂は、俺の顔を見るなりそう告げた。
「仕事?」
「ええ、仕事よ。『魔術師として』のね」
「ああ、そりゃわかっているけど――」
 そう。いくら遠坂に年中へっぽこだのぼんくらだのにぶちんだのと罵られている俺でも、それぐらいの見当はつく。
 時計塔からの呼び出しを受けた遠坂が持ち帰って来た仕事なのだから、それは当然魔術師としての仕事だろう。
 ただわからないのは、
「でも遠坂、なんでそんな――」
 そう、なんでそんな表情をしているのか。
 思い悩んだその表情は、いつもの自信に満ち溢れた表情ではなく、いつもの全ての不安を跳ね除ける表情ではない。
「ああ、ごめん」
 俺の言いたいことに気づいたのか、遠坂は一言謝ってから大きく深呼吸をする。
そして俺のほうに向き直り、その口を開く。
「いい、士郎。良く聞いて」
「ああ」
 いつもの遠坂凛に――たとえ完全ではないにせよ、俺に気弱なところを見せまいと、真剣な表情を見せる遠坂に、俺は返事を返す。
「士郎の言う通り、さっき時計塔から呼ばれて仕事を一つ請負ってきたわ」
 喋っているうちにいつもの調子を取り戻したのか、はきはきとした口調で言葉を続ける。
「内容は、聖遺物の回収と封印」
「わかった。それで、回収する物は?」
 俺の問いを聞いて、また何か思い悩むような表情を見せる遠坂。
 しかし一瞬後には決意を秘めた表情に戻り、まるで自分に言い聞かせるように、ゆっくりと、しかしはっきりと俺の問いに答えた。
「――聖杯よ」



 聖杯、それは無限ともいえる魔力を秘め、所有者の望みをかなえる願望器。



アメリカ? そんな場所で聖杯戦争が起きているなんて話――」
「ええ、そんな情報は協会でも掴んでいなかった。だからこそ、そこに聖杯があることを最近まで知りえなかったのだけれども」
「――じゃあ、その聖杯はもう誰かのものになっているって言うのか?」
「ええ、しかも魔術師でも――魔術使いですらない男のものになっているわ。しかももう十年もの間ね」



 協会からの依頼を受け、アメリ東海岸へと赴いた俺たちを待っていた物は。



「くそ、なんでこんなやつが――」
「離れて士郎! 吹き飛ばしてやる!」
 圧倒的なまでの力を見せ付け、立ちふさがる漆黒の守護者。
「HAHAHAHAHA! そんな攻撃、効きはしないよ!」
 秘密裏に張り巡らされた地下空洞で、俺たちの目的である『聖杯』を握り締めた小太りの男の哄笑が響く。
 その醜悪な男には、何ら恐れることも無い。あの冬木の聖杯戦争で戦ったような魔術師ではなく、ましてや人知を超えた英霊でもない、ただの人間だ。
 ただこの地に在る聖杯を手に入れ、その守護者を操る術を身につけた、ただの男。
 男はただの男であるが、守護者は掛け値なく強力な存在だった。
 その体躯は大きく、張り詰められた筋肉によって繰り出される打撃はまるで戦槌のよう。
「せいっ!」
 もう幾度目になるのか、切り裂かれて貫かれて、おびただしい量の血を流してもその守護者は片膝を着くことすらなく、それどころか一太刀斬られる度にその目には凶々しい光が宿って行く。
 俺の投影した剣は勿論、遠坂の虎の子の宝石をつぎ込んだ必殺の魔術ですら守護者を倒すことは叶わない。
 そんな俺たちを見た男は醜い笑みを浮かべ、そろそろ飽きたとでも言った風に、黒衣の守護者に指示を送る。
「そろそろ楽にしてやれ――」
 そして守護者は、動き出す。
 その巨体に似合わぬ恐ろしい速度で、この地の聖杯を奪おうと言う侵入者を討ち滅ぼすために。
「THE――UNDERTAKER!」
 この地の聖杯を奪おうとする、愚か者のことごとくを埋葬するために。





Fate/stay night ―Rest In Peace―



後書きっぽく。

ふと「テイカーって聖杯持ったヘイマンに操られてたよな」とか思いついてmixiに書きなぐってみたのを、微妙に加筆修正してこっちにあぷしてみたり。
いや、書き始めたきっかけは「テイカーってヘイマンが持ってる聖杯に操られてたよな」とかそれだけなんだけど、FateWWE両方ネタ理解してくれる人って何人ぐらいいるんでしょうか。
ちなみにMSGの聖杯は毎回のレッスルマニアで千人単位の思念を受け、その魔力を維持しているとか、その魔力はWWEの繁栄に使われているとか、黒幕はビンスとかそんな妄想。
ラストは聖杯の支配を振り切ったテイカーVS聖杯の力に飲み込まれた黒化(nWo)ホーガンとかそう言う妄想も。
つうかもうFateがどうでもいい話になりそうだ。